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中央テレビ『大国崛起』
お薦め度☆☆☆☆(最高は☆☆☆☆☆)
11月13日から24日まで、中国中央テレビ(経済チャンネル2)で「大国崛起」(大国の勃興)と題されたドキュメンタリーが12回に分けて放映され、大きな反響を呼びました。とにかく、この放送をまとめたDVDが発売と同時に完売、正規版はなかなか入荷されず、ほぼ同時に売り出された本も売れまくったということで、私も遅まきながらDVDを入手して、出張の飛行機の中などを利用して、一気に見終えました。
本日は、このドキュメンタリーを取り上げたいと思います。
全部で、12集あって、基本的には1集でひとつの国を取り上げています(それぞれ40分程度)。
15世紀以降勃興した「大国」の勃興の歴史を取り上げたものということで、私は、最初ポールケネディの『大国の興亡』の焼き写しかと思いました。或いは、80年代後半に、中国の近代化の遅れを漢民族の精神構造に求めて大きな反響を呼んだドキュメンタリー「河殇」のように、新しい切り口で自国(中国)の歴史に迫るといった作品かと期待もしました。
結果は、どちらでもありませんでした。内容は、「1.ポルトガル・スペイン、2.オランダ、3.イギリス(1)、4.イギリス(2)、5.フランス、6.ドイツ、7.日本、8.ロシア、9.ソ連、10.アメリカ(1)、11.アメリカ(2)、12.総まとめ」という流れです。中国国内のBBS(電子掲示板)を見ると、
「世界観が変わった」
「このような歴史の捉え方もあるのかと思い感動した」
「これから大国の仲間入りをする我々偉大な中華民族にとっては必見のドキュメンタリー」
といった賛辞が羅列されており、私もわくわくしながら見たのですが、何のことは無い、高校の世界史の授業を5割くらい簡単にしたような単純な内容でした(最後の12章では、なにか独特の見解がしめされるのではないかと期待しながら最後までがんばって見た私は、少し疲労感を覚えました)。むしろ、なんでこんな「普通の」ドキュメンタリーを製作するためだけに、世界各国に取材団を派遣し、その国の一流の学者数名にインタビューしなくてはいけないのか、不思議に思ったほどです(これは、ものすごい費用だと思います)。
それはそれとして、日本人として興味があるのは第7集の日本ですよね。
中国で製作されたこの種のドキュメンタリーの中での比較感で言えば、かなり冷静、客観的に作られていて、少しほっとしました。明治維新から所得倍増計画まで、特に、岩倉使節団の派遣、大久保利通の殖産興業政策、澁澤栄一の儒教道徳に基づいた経営思想、ソニーの勃興などにスポットを当てて、日本の発展の「秘訣」を探っています。お決まりの「軍国主義・侵略・南京大虐殺」→「まったく過去の歴史を反省しない民族性」→「アジア人民、世界人民に尊敬されない国」という「あの歴史観」では無く、その代わり日清戦争から第二次世界大戦までを一まとめで「軍国主義化」として、20秒くらいで飛び越してしまいました。

そういう意味では抑制の効いた編集を貫いたものと言えます(イギリスの章でも、アヘン戦争や香港植民地化についてはまったく触れませんでした)。
では、なぜ、こんな「普通のドキュメンタリー」がこのような強い反響を呼んだのでしょうか?
私は、ひょっとして中国の学校教育では相当歪んだ歴史教育がなされているからかと思い、大学(上海外国語大学)をでたばかりの同僚に、
「なんで、こんなしょうもないドキュメンタリーが話題を呼ぶの?日本やったら世界史の授業と同じやで」と聞いてみたら、「テレビで暇だったからなんとなく全部見た」という彼は、まったく私に同感という感じで大きく肯き、
「たぶん、我々の若い世代の文系であれば、学校で習ったことばっかりでぜんぜん面白いと思わない。でも、若い世代でも理系の連中はほとんど歴史を勉強しないので、ひょっとしたら新鮮だったのかもしれない。あと、50歳以上の人にとっては、何もかもが新しい発見だったんじゃないですか・・・」
と、くっくっくっくっと笑いながら解釈してくれました。
なるほど、そういうことか。少し安心・・・。
そう馬鹿にしながらも、私は、ぜひ多くの方にこのドキュメンタリーを見ていただきたいと思っています。なぜなら、それは、大国へと向かう自国(中国)への警笛として、
①文化・教育の要素を強調していること。
②素直に他国から学ぶ姿勢を強調していること(ピョートル大帝の改革や、日本の岩倉使節団などにはかなり時間を割いて、その意義を解説していました)
③所得の公正な分配を大国の条件として強調していること
④憲政制度の重要性を強調していること
がユニークだと思ったからです。
逆に、多くのBBSが指摘しているとおり、
「なぜ、中国が、これらの大国の一員となれなかったのか」についての分析が無い
というところは、このドキュメンタリーの大きな欠陥だと思います。
因みに、胡錦涛政権発足後、中央政府は、このドキュメンタリーと同じ切り口(この500年間の大国の興亡の歴史研究)で勉強会を開催したと聞きます。我々外国人からすれば、世界の歴史を勉強するという見地ではなく、中国政府が、今後どのように国民を啓蒙していこうとしているのか、このドキュメンタリーを見ることで理解できるのではないかと思い、、そういう文脈で一見の価値はあると判断いたしました。
お正月休みを利用して、DVDをご覧になられては如何でしょうか?
(中央テレビは、好評のため12月27日より再放送を行うことを発表しております)
(追)
たまたま西安の空港で、このドキュメンタリーの日本の章の本が売られていましたので買ってざっと流し読みしてみました。ドキュメンタリーよりはかなり詳細でしたが、詳細なぶんだけ、いわゆる「あの歴史観」が現れていて、がっくりきました。日本を取材した現場監督(女性)の手記なども書かれていますが、日本に対する偏見はどうしようもなく、よくぞこの現場監督のフイルムを、あれだけ客観的なものまでもっていったものだと、編集監督の手腕に敬服いたしました。
本は、あまり読む必要は無いと思いましたので、念のため付言いたします。
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